第69回 「マンスリー形態マガジン」 2017年1月号

『 四季の庭園に日本画廊 』

前 略

 新年明けましておめでとうございます。本年もマンスリーマガジンをどうぞよろしくお願いいたします。
   昨年の12月初旬、島根県安来市の『足立美術館』に行ってきました。昔から憧れの美術館でしたのでやや興奮気味で訪れましたが、興奮未だ冷めやらず‥といったところです。入園するやいなや枯山水の広大な華麗な庭園(5万坪)がお出迎えです。そして入館して窓越しからみる庭園は、松葉の緑に紅葉の名残が絶妙に調和し、まさしく絵画そのもので二重の感動に慕うことができます。本庭園は借景を見事に調和させたところも特徴で、そこには壮大な絵図が浮かび上がります。春は花々な咲き誇り、夏は緑鮮やかに、秋は紅葉が彩りを添え、冬は純白の雪が舞い、四季を味わえる庭園としても有名です。
   庭園の余韻に慕いながら、現代日本画の名作約1500点を収蔵した画廊に足を運びますと、まずは横山大観の作品が迎えてくれます。本美術館では横山大観の作品が130点と最も多く収蔵され、他に竹内栖凰、川合玉堂、 富岡鉄斎、榊原紫峰、上村松園など巨匠の作品が一堂に並びます。また、陶芸館には安来が生んだ陶芸家・河井寛次郎、稀代の料理人で陶芸家としても知られる北大路魯山人の作品も展示されています。
   ところで、本美術館は、地元出身の実業家、足立全康(あだちぜんこう.1899~1990)氏が、1970年71歳の時に開館したそうです。質量とも日本一といわれる横山大観の作品は足立コレクションの柱となっています。庭園の手入れは、毎日午前8時より職員の方々が一斉に行い、木々の成長に伴い周囲とのバランスを考えて植栽がなされるため、常に同じ光景が観られるようになっています。
   検査のデータ管理もそうですが、日々の精度管理がここにも求められているようです。
   2015年の日本庭園ランキングでは、1位が足立美術館、2位が桂離宮(京都府)、3位が山本邸(東京都)、4位が養浩館庭園(福井県)、5位が御所西京都平安ホテル(京都府)で堂々の1位を占めています。
   本美術館はフランスの旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で三つ星(最高評価)を獲得し、また、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデイニング」の庭園ランキングでは13年連続一位に選ばれています。荘厳な庭園を窓越しに飲むコーヒーはまた格別で、皆さんも贅沢な安らぎを味わってみませんか。
   近隣には安来節(やすぎぶし)でおなじみの安来節演芸館、国宝松江城、少し足を延ばしますと鳥取県境港近郊にはゲゲの鬼太郎でおなじみの「水木しげる記念館」があります。

資料参照:安来市観光協会ガイドブック

草々

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 




著作権について

今回のねらい

 今回は、骨髄の細胞同定と症例の形態診断に挑みます。
細胞同定は、分化過程の習得と類似細胞との比較をしながら進めてください。
   症例編は、骨髄の芽球が優位の所見ですが、形態所見に診断づけるポイントがあるかも知れませんのでよく観察してください。
   特殊染色のSBBとはズダンブラックB染色のことです。現在は使用されていませんが、従来はPO染色と併用していたもので、その評価はPO染色と同様に考えてみてください。
   今回も選択肢がありませんので多くの情報から絞り込んでください。

問題

骨髄の細胞同定を行なって下さい。

1-1<問題1-1>

  • BM-MG×1000

1-2<問題1-2>

  • BM-MG×1000

1-3<問題1-3>

  • BM-MG×1000

1-4<問題1-4>

  • BM-MG×1000

検査データと末梢血、骨髄像より考えられる疾患何ですか。

2-1<設問1>

【所見】
【10-15歳.女性】
主訴:全身倦怠感、貧血 WBC3,800/μL、RBC162万/μL、Hb5.3g/dL、Ht15.8%、PLT1.5万/μL、NCC14.8万/μL(芽球優位)

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-SBB×1000

解答・解説

一口情報

Step1. SBB染色が消えた理由

 FAB分類が国際の統一分類として普及した頃(1976 ~)、顆粒球系の特殊染色にはペルオキシダーゼ(PO)染色とズダンブラックB(SBB)染色が併用されていました。
   その理由として染色結果に相関性があるということでした。ところが、症例のなかに解離するものが報告されるようになり、SBB反応の方が高い陽性率を示すことが解ってきました。それは、AMLの診断基準(芽球のPO反応陽性率が3%以上)に支障を来すことになります。両者は隣接して局在するものとされ、SBBはPO反応によく符合する陽性成績を呈することで採用されたことになりますが、POは酵素を、SBBはリン脂質を証明するものであり、解離がみられてもおかしくないのかも知れません。
   結局、その後AMLの光顕的診断にはPO染色が先行されるようになり、SBB染色は使用されなくなりました。

Step2. 8;21転座AMLの提唱は日本から‥?

 8;21転座AMLはRowleyら(1973)によってt(8;21)(q22;q22)AMLとして提唱され、多くはAML-M2に多く、M4の一部にも存在すると言われました。
   歴史をひも解きますと、本邦の鎌田ら(1968)によって、NAP低値、t(Cq-;Gp-)の亜急性骨髄性白血病の報告が記されています。現在に置き換えるとCq-は8番長腕の部分欠失、GP-は21番短腕の部分欠失にあたるようです。
   鎌田らの時代には正規な核型異常の表記がありませんでしたので、今思えば8;21転座をすでに予測していたことになります。

問題 1

(正解と解説)
   細胞同定の提示細胞につきましては、3例(①③④)が2016年7月号とダブっておりました。
ダブった3例につきましては再度正答と思われる細胞名を下記に表記しますが、説明に関しましては7月号を参考にして下されば幸いです。今後はこのようなミスがないようにメンバー一同気をつけます。

【正答】

① 1-多染性赤芽球、2-単球、3-桿状核球、4-分葉核球
② 1-前骨髄球(骨髄球類似)、2-桿状核球、3-単球、4-桿状核球、5-前骨髄球、6-後骨髄球、7-後骨髄球
③ 1-細網細胞、2-幼若好塩基球、3-単球
④ 1-前骨髄球?、2-多染性赤芽球、3-造骨細胞

【解説】 ②についてのみ述べます。

(BM-PO ×1000)
   顆粒球系細胞の分化過程と単球の同定です。
   3.は核網工(クロマチン網工)の繊細さと核形不整、細胞質の灰青色から単球に同定しました。
   顆粒球系細胞は大きさと核の形状、細胞質の色調と顆粒の様式から同定を始めますが、本例では5→1→7→6→2と4.の分化過程が考えられます。判定に問題となるのは1.と6.になりますが、
1.は5.の典型的な前骨髄球に比べるとやや小さく、細胞質の好塩基性は薄れていますが、豊富な細胞質と一次顆粒は有しているようですので前骨髄球に同定しました。6.は桿状核球にもみられますが、両側の陥没が1μm以下とみなすと後骨髄球にしたいところです。尚、陥没がそれ以上になりますと、桿状核球(2.と4.)になります。ちなみに7.は片側の陥没が僅かにみられる後骨髄球と思われます。



問題 2

   女児の例で、貧血と全身倦怠感を主訴として来院され精査のため骨髄穿刺が施行されました。末梢血は汎血球減少症を呈し、骨髄は正形成の状態でした。本例はWHO分類(2008)が提唱される以前の例です。

【解説】

(PB-MG ×1000)

(BM-MG ×1000)

(BM-MG ×1000)

(BM-SBB ×1000)

【末梢血液像所見】(提示していません)
   大球性正色素性貧血で白血球数は減少気味ですが、芽球は72%出現し一部にアウエル小体を認めました。

【骨髄像所見】
   正形成の骨髄(14.8万/μL)は芽球が94%みられました。芽球には大小不同がみられ、なかにはアズール顆粒を有するものや核形不整や明瞭な核小体を有し、アウエル小体を認めました。アウエル小体は多様性で、長いものや短いもの、また束状(松葉状)を有するものもみられました。

【特殊染色】
   芽球はズダンブラックB(SBB)染色に85%が陽性のことより骨髄芽球として捉え、骨髄で芽球が90%以上(実際は94%)のことからAML-M1を考えました。尚、PO染色も同様に高率の陽性を呈していました。
   NAP染色における好中球の陽性態度は陽性率38%、陽性指数56と低値でした。

【染色体所見】
   46,XX,t(8;22)(q22;q22)の核型異常とAML1-ETO遺伝子変異を認めました。

【表面形質】
   CD13、CD33、CD34、CD117、HLA-DRの発現がみられました。

【臨床診断】
   芽球は末梢血の白血球数減少気味のなか72%みられ、骨髄では94%と著増しており、それらはSBB染色とPO染色に高率陽性であったことと、表面形質で未熟な芽球を示唆するCD34、CD117の発現を認めたことからAML-M1と診断されました。ただ、芽球の多様性の形態異常とPO染色の強陽性(上記)のことから、M1で8;21転座を有する病型を疑い、結果としてt(8;21)/AML1-ETOが証明されました。
   本型はMDSでもみられるとの報告がありましたが、それは芽球(アズール顆粒を有するもの)の捉え方にあったのだと思われます。すなわち、顆粒を有する芽球を前骨髄球に判定すれば必然的に芽球は減少し、AMLの診断基準の20%を超えないことでMDSになります。そのような症例を含め、WHO分類(2008)では「特定の遺伝子異常を有するAML」 として包括されました。尚、遺伝子変異はRUNX1-RUNX1T1に変更されました。



これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。

医療関係者の方は、次のページへお進みください。
(お手数ですが、「進む」ボタンのクリックをお願いします)