第154回「眺めるもよし、登るもよし、富士の山」2024年2月号

今月のコラム:『眺めるもよし、登るもよし、富士の山』

日本の最高峰「富士山」(3776m)について、意外と知らない情報や私の登山経験から少し触れてみたいと思います。富士山を一望できるスポットは沢山ありますが、特に絶景とされるのが、長池親水公園、忍野八海(おしのはっかい)、本栖湖(もとすこ)、天下茶屋(てんがちゃや)、田貫湖(たぬきこ)、新倉山浅間公園、日本平、川口湖、三島スカイウオークといわれています。

ここでは富士山周辺の「富士五湖」(河口湖・本栖湖・精進湖・西湖・山中湖)から眺めることにしましょう。まず「河口湖」は湖面に映る“逆さ富士”がよく知られていて、松尾芭蕉の句や葛飾北斎の“富嶽(ふがく)三十六景”に登場する景勝地でもあります。「本栖湖」は富士五湖で一番深い湖(水深125m)とされ透明度が高く、湖畔から約30分の山道を登った中之倉峠から眺めた富士山が圧巻で千円札に印刷されています。「精進湖(しょうじこ)」は富士五湖で最も小さな湖、手前の側火山である大室山を抱いているようにみえることから“子抱き富士”ともいわれます。「西湖(さいこ)」は青木ケ原樹海に囲まれた淡い藍色の神秘的な湖水で、根場浜(ねんばはま)から富士山を一望できます。「山中湖」は富士五湖最大の大きさで富士山に最も近く、“ダイヤモンド富士”の聖地として有名です

私は現役最後の年(2007年9月1日)、晴天のもと静岡県の知人2人と初めて富士登山に挑戦しました。富士登山には4つのルートがあるそうですが、初心者向きとされる富士宮ルートを選択し、富士見口五合目を午前五時頃出発する日帰り登山いわゆる弾丸登山でした。最短距離でしたが傾斜が急で、標高が高くなると気圧が低くなり低酸素状態に陥り、9合目付近から高山病(頭痛、吐気など)に悩まされ、1m登るのに5分ほどを要し5時間かけて登頂できました。本ルートは距離が短い分、一気に高度が上がり身体の順応ができず高山病になるリスクが高まるとのこと、初心者の成功率は約50%といわれますので無謀な挑戦でした。登山には必要な最低限の装備(登山靴・服装・雨がっぱ・日焼け止め対策・飲料水など)はもちろんのこと、登頂には高度に身体を順応させ時間をかけて登ることがポイントになります。古来より人々の信仰を集めてきた「富士山」は眺めても登っても思い出深い景色になることでしょう。

 


  • 河口湖から湖面に移る“逆さ富士”
    (写真提供:K.M氏)


  • 精進湖から眺める “子抱き富士”
    側火山の大室山を抱いたようにみえる
    (写真提供:K.M氏) 


  • 山中湖は富士五湖で最大で
    “ダイヤモンド富士”や“赤富士”と言われる
    (写真提供:K.M氏)


  • 富士山登頂の筆者
    (撮影:2007.9.1)


2024年1月号の問題.  下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【Q1】 特殊染色をうまく染めるコツや練習方法などありましたら教えていただきたいです。
【助言1】 単球系の腫瘍細胞の増加には非特異的EST染色(ブチレートまたはアセテート)が有効ですが、ブチレートは顆粒状に、アセテートはびまん性に染まることを認識しておきます。単球系は茶褐色の陽性を呈しフッ化ナトリウム(NaF)の添加によって陽性色が減退し阻害されることで証明されます。この場合、顆粒状に染まるブチレートESTの方が判定しやすいようです。NaFによる阻害度の判定で陽性顆粒が僅かに残存した場合は、陽性色に対し阻害されていることに相違ないので部分的阻害として捉えることは如何でしょうか。ブチレート陽性の単芽球(A:M5a)、NaFに完全阻害された例(B)と部分的阻害された例(C)を提示します。

【Q2】 PAS染色はB細胞性ALLに点状陽性に染まり診断に有効と聞きましたが、MDSでは診断に有効となるポイントはありますか。
【助言1】 PAS染色はグリコーゲン、デンプン、セルロース、ムコ多糖体、ムコ蛋白、糖脂質に染まり、血液細胞の多くはグリコーゲンとされます。経験から小児のB細胞性ALLは約80%に染まり、その多くは点状(A.矢印)や塊状に染まります。これは他の白血性の芽球にはみられないことです。また、MDSやAML-M6の赤芽球に染まることがあります。一般に赤芽球はPAS染色に陰性ですが、MDSでは成熟赤芽球にびまん性陽性(強度または弱度.B)を呈することが多く、M6では未熟赤芽球に顆粒状陽性(C)を呈することがあり、それらは腫瘍性の赤芽球として考えられています。さらにMDSに出現する微小巨核球にも陽性(D.矢印)を呈しますが、それは微小のためにMG染色で見落とされた時の補助となります。成熟巨核球はもともとPAS染色に陽性です。尚、提示した症例は自家製法で染色したものです。
点状陽性の
リンパ芽球
びまん性陽性の
成熟赤芽球
顆粒状陽性の
未熟赤芽球
びまん性陽性の
微小巨核球

2024年2月号の問題.  下記の2つのご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【Q1】 骨髄像で骨髄巨核球の分布を判定する場合に標本上の数値基準はありますか。また形態異常として意義のあるものはどれですか。
【Q2】 赤血球の染色性で高色素性と多染性と記載されますが同じものとして捉えるのでしょうか。

形態マガジン号キャプテン  阿南  建一

MAPSS-DX-202402-21

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今回のねらい

「細胞同定」については、骨髄像の同定に挑戦します。
紛らわしい細胞や鑑別を要する細胞を提示しましたので試みてください。
「ワンポイントアドバイス」は、AML-M5におけるEST染色のフッ化ナトリウム(NaF)阻害試験の判定とMDSにおけるPAS染色の陽性の意義について深堀りします。

問題

問題1

1-1<設問1> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-2<設問2> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-3<設問3> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-4<設問4> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

問題1

2-1確認対象ではありません。

解答・解説

問題 

骨髄像の細胞同定を行ってください。

【解説】

A-1. 大型で細胞質は不明瞭ながら豊富で、核は類円形でクロマチンは細網状のことからマクファージとしました。
A-2. 赤血球(8μm)とほぼ同大で核のクロマチンは凝集状、細胞質は青紫色(多染性)のことから多染性赤芽球としました。
A-3. 直径12µm大、核はくびれ分葉傾向のことから分葉核球と思われます。
A-4. 直径15μm大、核は軽度の不整でクロマチン凝集は認めませんが、細胞質が淡青色のことからリンパ球としました。一般にリンパ球のクロマチン凝集は小リンパ球ほど強度で中型から大型になるにつれ弱くなるようです。
A-5. 核は桿状(バナナ状)のことから桿状核球と思われます。

B-1. 細胞質は正染性に近い色調ですがクロマチン凝集が顕著のことから多染性赤芽球としました。
B-2. 核は分裂像を思わせ、細胞質は軽度の好塩基性で顆粒をもたないことから赤芽球の有糸分裂(赤分核)としました。
B-3. 相対する二個とも直径12µm大、核は円形で中心性、クロマチンは凝集状で細胞質は多染性の色調から多染性赤芽球としました。
B-4. 直径25μm大、核は円形で中心性、クロマチンは繊細顆粒状、細胞質は強度な好塩基性でコブ状の突起を認めることから前赤芽球としました。
B-5. 直径15μm大、細胞質は不明瞭ながら核は桿状を保持しているようで桿状核球と思われます。

C-1. 直径18μm大、核縁は僅かに不整でクロマチンは繊細、細胞質は軽度の好塩基性で微細顆粒を認めることから単球としました。
C-2.3. 直径19μm大、核は類円形で中心性、クロマチンは粗顆粒状、細胞質は好塩基性であることから好塩基性赤芽球としました。
C-4. 核は類円形でクロマチンは細網状、細胞質は不明瞭ながら両側に伸びているようでマクロファージとしました。

D-1. 直径25μm、大型で核は偏在しクロマチンは粗く、細胞質は中等度の好塩基性で顆粒は一次顆粒とみなし前骨髄球としました。
D-2. 直径15μm大、左側面は赤血球に押され縮小気味でクロマチン凝集がまだ見られないことから前骨髄球としました。大きさは骨髄球ですが縮小傾向と核質が合致しないことをポイントにしました。
D-3. 核は分裂像を思わせ、細胞質は軽度の好塩基性で顆粒を有し大型であることから前骨髄球の有糸分裂(白分核)と思われます。

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