第142回「マンスリー形態マガジン」2023年2月号

マンスリー形態マガジンの新たなるスタート

皆様へ

 2011年3月に発信しました「マンスリー形態マガジン」は2022年12月号をもって140回を迎えることになりました。これも約11年の永きもの間、閲覧下さった皆様のご支援の賜であり改めましてお礼申し上げます。
 本年より目玉の1つでもありました“コラム” はしばらくお休みさせていただき、新たに2023年2月号より “ワンポイントアドバイス” のコーナーを設けました。研修会などでいただきましたご質問の中から文献ならびに私的考察から解説いたしますが、私見につきましては必ずしも有効になるとは限らないことをご理解の上、ご一読下されば幸いです。



問題.  下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【疑問】 通常、血液像の目視を100カウントで実施していますが、200カウントで実施した方が良い場合の条件を教えていただきたいです。
検体数によりメイ・ギムザ染色を染色用バットや染色瓶で使い分けていますが注注意点がありますか。また、メイグリュンワルド染色液はどれくらいの頻度で交換した方が良いでしょうか。
【解説 次回3月号にて解説します。
               

形態マガジン号キャプテン  阿南  建一

MAPSS-DX-202302-18

著作権について

今回のねらい

今回も血液細胞に関連する細胞化学染色の役割を認識するために提示しております。
血液診断には不可欠なマーカーでもあり、判定などに慣れるために今回も挑戦してみてください。

問題

問題1

1-1<設問1> 骨髄の細胞化学染色から染色名と得られる情報を述べてください。

問題2

2-1<設問2> 骨髄の細胞化学染色から染色名と得られる情報を述べてください。

解答・解説

問題 1

骨髄の細胞化学染色から染色名と得られる情報を述べてください。 

 

【解説】

A.酸性ホスファターゼ(ACP)染色です(自家製法)。Tリンパ芽球性白血病(T-ALL)の症例です。

CBA(クエン酸緩衝アセトン液)を固定液として、基質にnaphthol AS-BI phosphate、発色剤にfast red ITRをアゾカプリングさせた染色です。ACPは多くの血液細胞に存在しますが、特にリンパ球のTとBでは異なる染色性を呈することでこの染色の意義はあります。正常のTリンパ球は大きめの点状陽性を、Bリンパ球は小さめな顆粒状の散在性を認めます。本例の場合は、大きめな点状陽性を呈していることからT細胞性腫瘍の陽性態度として捉えます。

B.ACP染色です。Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)の症例です。

A.と同じ自家製法のACP染色です。T-ALLの大きめな点状に対し、B-ALLでは大きめな顆粒状の散在性を呈することでB細胞性腫瘍の陽性態度として捉えます。ACP染色は試薬調整が複雑でもあり、今日ではキット法(市販品)で代用できます。尚、T、Bの詳細な証明には免疫表現型を検査します。

C.アセテートEST染色です(自家製法)。急性単球性白血病(M5b)の症例です。

M5bの単球系を証明するために実施したアセテートEST染色であり、茶褐色のびまん性陽性を呈しています。一般に使用されるブチレートEST染色は顆粒状に染まり判定しやすいものの、経験上、アセテートEST染色の方が陽性率が高いように思います。共に非特異的エステラーゼの証明に使用されます。

D.PO染色です(ベンチジン法)。急性単芽球性白血病(M5a)の症例です。

ペルオキシダーゼ(PO)は顆粒球と単球のリソソームに存在し、特に顆粒球系細胞の有力なマーカーとなるためミエロペルオキシダーゼ(MPO)ともいわれます。M5aの未熟な単芽球はPO陰性ですので6個とも陰性がみられます(11時方向は陽性の好中球)。本法のPO染色では、MG染色でみられる単芽球の明瞭な核小体をより鮮明に捉えることもできます。


問題 2

骨髄の細胞化学染色から染色名と得られる情報を述べてください。 

【解説】

A.ズダン・ブラックB(SBB) 染色です(自家製法)。急性骨髄性白血病(AML)の症例です。

5%グルタールアルデヒド液で固定しSBB保存液で反応させ、過剰な色素の除去には純エタノール(5秒間)を使用した方法です。本例は骨髄芽球が黒褐色に染まったものです。本染色はFAB分類が提唱された頃、PO染色と相関がよいということで骨髄系の証明に併用されていましたが、もともとリン脂質を染めるものであり、双方間に解離することが判明し現在はAMLのマーカーとしては使用されていません。

A.PAS染色です(自家製法)。急性赤白血病(M6)の症例です。

赤芽球はPAS染色に通常陰性ですが、腫瘍性を帯びてくると陽性になる傾向にあります。本例は従来のM6aに相当する症例で、大型の二個の未熟赤芽球は顆粒状、小型の二個の成熟赤芽球はびまん性に染まることが特徴です。本染色の陽性物質の多くはグリコーゲンとされます。

C.PO 染色です(ベンチジン法)。急性単球性白血病(M5a)の症例です。

M5aの単芽球はPO陰性であることは問題1-Dにも述べましたが、本例の右方向の3個の単芽球は弱陽性~陽性(矢印)を呈した稀なケースです。本例の単芽球の核小体も鮮明に捉えることができます。

D.NAP染色です(自家製法)。慢性骨髄性白血病(CML)の症例です。

アルカリホスファターゼ(ALP)はアルカリ性下で加水分解する酵素で成熟好中球の細胞質に存在するため好中球アルカリホスファターゼ(NAP)とよばれます。CMLの末梢血におけるNAP染色で、好塩基球(〇印)と好中球(矢印)が陰性としてみられ、7時方向の好中球は陽性(青色)です。好塩基球はNAP染色に陰性ですので、陰性の好中球との鑑別が求められます。好塩基球は水溶性の性質から染色の過程で顆粒が溶出し、その跡は空胞としてみえることや核の輪郭が不明瞭なことから好中球との鑑別は可能と思われます。

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