第101回 「マンスリー形態マガジン」 2019年9月号

『Made by いとしま、 伊都菜彩』

   私の住む糸島市は、福岡県の西部糸島半島に位置する人口約10万人の都市で、“福岡の湘南”と呼ばれることがあります。糸島市については、以前にも紹介しましたが、今回は、JA糸島が運営する「伊都菜彩(いとさいさい)」を紹介したいと思います。
  糸島は、対馬暖流による温暖な気候によって、糸島大地にはさまざなな自然の恵みがもたらされています。「伊都菜彩」は、“糸島産であること“を掲げ、テニスコート5面分の広大な店舗に約1,500の登録農家によって季節に彩られたさまざまな海の幸、山の幸や畜産・酪農製品が並べられています。
  糸島は、福岡市に隣接している地の利もあって、地元の人だけでなく、道の駅として観光客も立ち寄る人気スポットで、平日でも活気にあふれており、休日ともなれば午前中に大半のものが売り切れでしまうそうです。また、その売り上げ高は、JRの直売所として“日本一”を誇っています。
  糸島は、これから秋本番を迎えようとしていますが、ゴルフトーナメントや音楽フエステイバルが開催され、10月になると30店舗の牡蠣小屋が一斉にオープンし、芳醇で濃厚な糸島牡蠣が振る舞われます。
  みなさまも伊都糸島、「伊都菜彩」に一度足を運んで見てください。


糸島大地の自然の恵みが並べられた「伊都菜彩」



形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


著作権について

今回のねらい

  今回は、細胞同定と症例検討を提示しました。
細胞編は、骨髄の顆粒球系細胞と類似細胞の鑑別に挑戦します。
症例編は、僅かな検査所見に診断のポイントが含まれていますので、それを理解し、形態診断を試みて下さい。

問題

骨髄の細胞同定を行なって下さい。(通常より細胞の大きさは拡大しています)

1-1<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。(通常より細胞の大きさは拡大しています)

  • BM-MG×1000

1-2<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。(通常より細胞の大きさは拡大しています)

  • BM-MG×1000

1-3<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。(通常より細胞の大きさは拡大しています)

  • BM-MG×1000

1-4<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。(通常より細胞の大きさは拡大しています)

  • BM-MG×1000

1-5<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。(通常より細胞の大きさは拡大しています)

  • BM-MG×1000

1-6<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。(通常より細胞の大きさは拡大しています)

  • BM-MG×1000

僅かな所見と骨髄像から考えられる病型は何でしょうか。

2-1<設問1>

【所見】
A.【成人例】①汎血球減少、②PO染色強陽性、③HLA-DR(-)、④三年前に固形がん
B.【小児例】①汎血球減少、②PO染色陰性、③CD7/CD13/CD33(+)、④Down症
C.【高齢】①汎血球減少、②PO染色陰性、③CD19/20/22(+)、④手足の指:蒼白・暗紫色

  • BM-MG×1000

2-2<設問1>

【所見】
A.【成人例】①汎血球減少、②PO染色強陽性、③HLA-DR(-)、④三年前に固形がん
B.【小児例】①汎血球減少、②PO染色陰性、③CD7/CD13/CD33(+)、④Down症
C.【高齢】①汎血球減少、②PO染色陰性、③CD19/20/22(+)、④手足の指:蒼白・暗紫色

  • BM-MG×1000

2-3<設問1>

【所見】
A.【成人例】①汎血球減少、②PO染色強陽性、③HLA-DR(-)、④三年前に固形がん
B.【小児例】①汎血球減少、②PO染色陰性、③CD7/CD13/CD33(+)、④Down症
C.【高齢】①汎血球減少、②PO染色陰性、③CD19/20/22(+)、④手足の指:蒼白・暗紫色

  • BM-MG×1000

解答・解説

問題 1

   骨髄の細胞同定を行なって下さい。
(通常より細胞の大きさは拡大しています)

【解説】

(BM-MG×1000)





今回は、骨髄における赤芽球系の同定に挑みます。正常型から大型さらに巨大化する形態に着目しますが、なかでも大型の赤芽球を区分けする必要があるのかを考えてみます。赤芽球の核は、ほぼ円形で細胞質の中心に位置し、DNA合成障害により核の成熟乖離(核の遅延現象)が発生することを考えると、細胞質の色調を優先にして同定する方が望ましいようです。

【正答】
A-1.顆粒をもたない骨髄芽球(腫瘍性)、A-2.顆粒を有する骨髄芽球(腫瘍性)、B-1.前骨髄球、B-2.前骨髄球、
C.単芽球(腫瘍性)、D.前単球、E.前骨髄球(幼若型)、F.骨髄芽球

【解説】
A-1.細胞径17µm大、核は円形でクロマチン網工は繊細網状、核小体(矢印)を有し、好塩基性の細胞質にはアズール顆粒は認められません。核質所見や核小体の存在から顆粒を持たない芽球に同定しました。

2.細胞径17µm大、核は円形でクロマチン網工は繊細網状、核小体(矢印)を有し、好塩基性の細胞質にはアズール顆粒が認められます。核質所見や核小体の存在から顆粒を有する骨髄芽球に同定しました。骨髄芽球に顆粒を有する場合は、前骨髄球と比して小さいと捉えています。これらの骨髄芽球は、AMLにみられたもので腫瘍性の骨髄芽球になります。

B-1.細胞径15µm大、核は偏在し、クロマチン網工は粗網状、核小体を有し、好塩基性の細胞質にはゴルジ野相当や粗大なアズール顆粒が認められます。核偏在と粗大顆粒より前骨髄球同定しました。

2.細胞径18µm大、核は偏在し、クロマチン網工は粗顆粒状、核小体を有し、好塩基性の細胞質にはゴルジ野相当が見られ、アズール顆粒が僅かに認められます。 低顆粒の前骨髄球に同定しました。

C.細胞径25µm大、大型で核は類円形で不整はなく、クロマチン網工は繊細網状、明瞭な核小体(青矢印)を認め、好塩基性の細胞質には僅かながら突起(赤矢印)や空胞が認められます。 大型、核質所見や明瞭な核小体の存在から単芽球に同定しました。

D.細胞径20µm大、核は中心性で核形不整が顕著、クロマチン網工は粗網状で明瞭な核小体を有し、細胞質にはやや太めのアズール顆粒が認められます。核形不整や明瞭な核小体の存在から前単球に同定しました。

E.細胞径24µm大、核は大型で偏在傾向にあり、好塩基性の細胞質にはアズール顆粒が認められます。核偏在と粗大顆粒の存在から幼若型の前骨髄球に同定しました。

F.細胞径20µm大、やや小型で核は円形、クロマチン網工は繊細で核小体が三個ほど認められます。好塩基性の細胞質にはアズール顆粒は認めません。7時方向に顆粒らしきものを認めますが、顕微鏡下では染色液の残渣物のようにみえます。正常の骨髄芽球に同定しました。



問題 2

   

【解説】

(BM-MG×1000)


今回は、骨髄像から形態的特徴のみられる3例を提示しました。これらは光顕的レベルから形態診断が可能と思われる症例です。また、掲載した検査所見は診断に大いに関連するものです。

【臨床診断】
A. 急性前骨髄球性白血病(APL,M3)、B. 急性巨核芽球性白血病(M7)、C. リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)

【解説】
A.成人例:小型で核は円形から亜鈴状(赤矢印)、細胞質にはアズール顆粒が充満し、蕾状(bud)の突起(青矢印)を有する芽球が78%と増加していました。これらはPO染色が強陽性で、CD13、CD33陽性、HLA-DRは陰性でした。また、臨床的にはDIC所見が見られたことからAPL(M3)を考えました 。本例は、三年前に分化型腺癌の乳癌の切除術が施行され、化療後に二次がんとしてAPLが発症したものです。このように小型で亜鈴状核や異常顆粒、突起物を有ることがあります。

B.小児例:中型から大型で核はほぼ円形核で濃染、または淡染状の芽球が混在し、水疱状(bleb)や蕾状を有する芽球が82%と増加していました(青矢印)。これらはPO染色に陰性、CD7、CD13、CD33の他、CD41、CD61、HLA-DRが陽性で臨床的にはDown症がみられました。芽球の特徴や血小板系マーカー(CD41、CD61)の陽性などの所見から急性巨核芽球性白血病(M7)と診断されました。本例はDown症を併発していて、小児のM7では時々見受けられます。

C.高齢:小型リンパ球様を中心に大型リンパ球の混在した細胞が65%見られました。ちなみに下段(矢印) は骨髄球と思われます。これらの細胞の細胞質は狭く、核は偏在傾向にあり、形質細胞様リンパ球と考えられます。B細胞のマーカー陽性、IgMの増加などからリンパ形質細胞性リンパ腫(マクログロブリン血症)と診断されました。



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