2015年9月21日掲載

(株)広島赤十字・原爆病院

Vol.30臨床に対するコンサルティングから積極的な診療支援を実施

Vol.30:広島赤十字・原爆病院 臨床に対するコンサルティングから積極的な診療支援を実施

左から塔村、芝、楠木、米田の各氏 広島赤十字・原爆病院(598床)検査室は、迅速で質の高い検査を行っており、特に血液疾患では、病型の診断を正確かつ迅速に行うための支援業務として検体検査室から必要とされる検査を提案し、診断の補助を行っている。また、無菌治療室の患者を対象とした感染管理のための細菌検査を行い、感染症による病態の悪化に迅速対応することで無菌室患者の感染対策に役立てている。

 広島赤十字・原爆病院は、26科の診療科を持つ地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院で、昨年度外来数は1日平均1550人。特に血液内科の評判が高く、「紹介された患者は断らない」をモットーに、昨年の患者数は3987人、1日の外来患者数は平均200人を数え、国内でも有数の治療実績を誇っている。骨髄像検査は月間約150件で、1日に最大で21件実施したこともある。また、無菌治療室が2病棟、54床あり、感染管理のための監視培養検査を週2回行っている。

初診時検査による確定診断

血液検査担当の皆さん 検体検査室は、検査部と輸血部が一体となって運営されている。検体検査室の特徴について検査部技師長兼輸血検査課長の楠木晃三氏は、「医師と検査技師との信頼関係ができており、より早く報告するために、担当医が次にどんな検査を必要としているか、常に念頭において検査を進めている」と説明する。
輸血部血液検査課係長の塔村亜貴氏は、「初診で血液内科を受診された患者が、血算や血液像の鏡検、貧血状態などの検査所見からビタミンB12や葉酸検査の必要性が考えられる場合は、検査室からすぐに主治医へ情報提供をおこなっている」という。また、白血病が疑われる患者に対しては、「骨髄像検査、フローサイトメトリー(FCM)検査、特殊染色の結果報告を3時間程度で行っている」といい、初診日にある程度の診断を確定し、治療が行える体制を整えている。

フローサイトメトリー検査など特殊検査の迅速報告

 白血病やリンパ腫、骨髄腫などの血液疾患が疑われる患者には、確定診断のためにFCM検査を行っている。フローサイトメーターは、ベックマン・コールター社の「Cytomics FC500」を使用している。塔村氏は、「末梢血液像の鏡検で、FCM検査が必要かどうかを見極め、必要な場合には、骨髄検体を持ち帰った段階で、主治医の了解の下、検査を行うことにしている」という。また、担当医は、血液検査室で患者標本の観察を行うため、今後必要な情報や臨床側の要望を直接確認し、次回以降対応できるよう努めている。塔村氏は、「時には叱られることもある」というが、これは医師とのコミュニケーションやディスカッションで起こることであり、信頼関係の構築につながっている。
検査結果について塔村氏は、「検査結果において、担当医が必要と思われる情報であれば、直接、外来診察室や病棟まで持参をし、説明を行う」こともあるという。特にFCM検査の結果は、サイトグラムからの情報が多いため、急ぐ場合には報告書を印刷した方が喜ばれるという。血液検査担当者が出向くことで人間関係をつくるコツにもなっている。

バイオタイパーで同定まで1日短縮

細菌検査担当の皆さん 無菌室について楠木技師長は、「外からの感染は防げるが、患者さんが保有する内因性の感染症にかかるケースが多くある」と述べ、咽頭、尿、便を対象に監視培養を行っている。
監視培養は、DPC導入病院では包括されるため実施施設は少ない。しかし、監視培養を実施することで、事前に検出菌の薬剤感受性が把握できていることから、感染症発症時に適切な抗菌薬が迅速に選択可能となっている。
起炎菌の同定を迅速に行うため、2013年末にベックマン・コールター社の微生物分類同定分析装置「MALDI バイオタイパー」を導入したことにより、同定まで1日早まった。
一般微生物検査課課長補佐の芝美代子氏は、患者が急に発熱した場合、すぐに血液培養を行うが、「陽性の場合、バイオタイパーで菌名を迅速報告することが可能となり、主治医にも喜ばれている」とバイオタイパーの導入メリットを語る。同院では、バイオタイパー導入前は、血培陽性時はグラム染色結果のみの報告で、菌名が分かるのは翌日だった。楠木技師長は、「菌名の報告が1日早まったことにより、迅速な診断・治療が必要とされる菌血症や敗血症への貢献度が1段アップした」とバイオタイパーの迅速性を評価する。微生物検査室の培養・同定は、月平均3800件。これに塗抹検査を加えると7600件となる。

国際的な基準範囲を評価

生化学・免疫検査担当の皆さん 一方、免疫血清検査の問題点について生化学・免疫検査課長の米田登志男氏は、「免疫検査は生化学に比べて、データ標準化が進んでいない」ことを挙げる。臨床により正確なデータを報告する中、ベックマン・コールター社の全自動化学発光酵素免疫測定装置「UniCel DxI 800」を選んだ理由の一つとして、「ベックマン・コールターが、国際的な基準範囲研究をメーカーとして最初に協力し、積極的に取り組んでいた。それにより、エビデンスデータも豊富だったことが非常に良かった」と述べる。
同院では甲状腺やCA19-9を一部外注していたが、これら項目を全て院内に導入したかったという。UniCel DxI 800では、ホルモンや腫瘍マーカー、PSAなどを測定、全て診療前検査として行っている。葉酸やビタミンB12は、血液内科からオーダーされることが多く、「ベックマン・コールターは、WHOの基準に沿った値を出しているので安心して使える」(米田氏)と述べた。

検査技師の育成に注力

新病棟完成予想図 検査部は、昨年6月に遺伝子検査室を立ち上げ、造血器腫瘍遺伝子検査15項目を実施している。コンパニオン診断関連の遺伝子検査(K-ras、EGFR、UGT1A1)についても導入が検討されたが収支面で厳しく、外注している。また、検査技師の年齢構成が比較的若いことから楠木技師長は、「まずは、各部署で専門検査技師の育成をしていきたい」と述べる。
チーム医療では院内感染対策に力を入れている。芝氏は、「医師、看護師、薬剤師、検査技師で、週に1回の抗菌薬カンファレンス、ラウンドを行っている」と述べ、検査部は、医師のみならず、他のコメディカルとも連携が図られている。現在、同院では、新棟を建設中であり、15年10月に開院の予定だ。

(THE MEDICAL & TEST JOURNAL 2015 年9月21日第1323 号掲載)

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