2012年7月11日掲載

大阪府・近畿大学医学部附属病院

Vol.12エリスロポエチン検査を院内化

貧血マーカーによる臨床支援モデル構築へ

Vol.12:大阪府・近畿大学医学部附属病院 エリスロポエチン検査を院内化

 近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部では、3つの貧血マーカーの院内測定により、新たな臨床支援の在り方を模索し始めた。 貧血を伴う患者比率の高さに着目し、貧血マーカーの測定を充実させ、検査結果に基づく臨床の介入や患者の予後などについてエビデンスを収集する計画だ。 国内初となる化学発光酵素免疫測定(CLEIA) 法によるエリスロポエチン(EPO) 測定試薬をベックマン・コールターが発売し、同社の全自動分析装置により院内で迅速に検査できるようになったことが新たな試みを可能にした。

 近畿大学医学部附属病院(940床、大阪狭山市) は、災害拠点病院として救急医療にも力を入れており、100床規模のER棟の建築が進行中。 医師や看護師が充足しているとはいえない現状を受けて、検査部としても業務負担軽減のために病棟支援などの活動に力を入れており、臨床検査技師の専門性を活かした臨床支援に積極的に関与する。

増田氏
増田氏

 血液検査を用いた臨床支援には技術係長の増田詩織氏が中心的に関わっている。 8年間血液検査に従事した経験から、血液検査の検査結果は、血液内科をはじめ、複数の診療科のさまざまな病態に関連しており、臨床支援の意義があると考えていた。 直近では周術期の血栓症対策に、外科、整形外科、婦人科、麻酔科などとともに院内に研究会を設置して取り組み、肺塞栓症の発生件数の減少につなげたという。
増田氏らが現在着目しているのは、貧血をより正確に、より早期に鑑別することによる臨床支援だ。 同院の患者の採血データを調べたところ、WHOの基準によれば男性は52.4%、女性でも44.0%が貧血に該当し、予想以上にその比率が高いことが分かった。 「貧血はさまざまな要因によって発症する。多種多様な貧血に対してできるだけ多くの情報をもとに対応できれば、貧血の早期改善につながり、基礎疾患の治療も良い方向に向かうため重要である」と増田氏は指摘する。
検査部では、2月からベックマン・コールターの全自動化学発光酵素免疫分析装置「ユニセル DxI800」を導入し、ビタミンB12と葉酸の測定を開始した。 ビタミン投与は副作用が強くないことから、医師の経験による投与が行われていたが、実際に測定を始めると治療にも変化が現れた。
ビタミンB12と葉酸を測定する患者の検査データを基に、測定値が低い場合は検査結果を見てすぐにビタミン剤などを投与するケースが出始めたという。 月間の検査依頼はビタミンB12が99件(2月時点)、葉酸は81件(同) で、診療科別に見ると血液内科が約半数を占めるが、5月には118件、96件で他科の依頼も増え、増田氏は、「徐々にではあるが今後も依頼件数は増えていくのではないか」とみる。

エリスロポエチンの臨床的有用性

アクセスEPOの希釈直線性
(低値検体希釈測定:最小検出感度)
アクセスEPOの希釈直線性

 検査部では、CLEIA法では日本で初めての測定試薬「エリスロポエチンキット アクセス EPO」が発売されたのを機に、この4月からEPOを検査項目に追加した。赤血球増加症などの鑑別補助や腎性貧血の診断に用いられるEPOをめぐって、特に腎性貧血では、腎障害に伴うEPOの産生低下が主因であると治療ガイドラインに記載されるなど、測定する意義が高まっている。
院内に取り込んだ理由としては測定時間が約45分と、従来法のRIA法よりも大幅に短縮したことが挙げられる。さらに増田氏は、測定レンジが0.6 ~ 750mIU/mLと大幅に拡大され、従来法よりも低濃度域での精密測定が可能になったことを、自身の検討結果を基に解説する(図)。今後は、新規測定試薬のそうした特性に着目し、EPOの新たな意義を見いだせるかどうかを検証していく計画だ。
「血液検査の結果だけで貧血の鑑別診断をするのは難しい」と現状について増田氏は指摘する。今後はEPO、ビタミンB12、葉酸以外の貧血マーカーも充実させる方向で検討しており、臨床が貧血を鑑別診断する際に参考となる検査結果を提供することができれば、新たな臨床支援になると考えている。
EPOの月間検査依頼は現在50件と、その有用性を検証するには、さらなる症例の積み重ねが必要となっている。増田氏は、「他施設と一緒にエビデンスづくりができれば」と話し、症例の蓄積だけでなく、多くの施設で臨床検査技師らが栄養管理、透析、輸血などさまざまな視点から、貧血マーカーを活用した運用や臨床支援の在り方を議論することが必要ではないかと強調する。
さらに病院検査部門発のエビデンスの蓄積には、試薬・装置メーカーの協力も必要との見方を提示。EPOなどの貧血マーカーについては、血液検査と免疫検査の双方にノウハウを持つベックマン・コールターによる側面支援に期待を寄せている。

(The Medical & Test Journal 2012年7月11日 第1201号掲載)

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